帰り道。
「今日の坂下さんすごかったです」
葵が興奮覚めやらぬ、という口調で話し掛ける。
「そう?でも、まだまだ綾香には敵わないな」
「そんなことないですよ」
そう言って、あの短い時間の攻防を事細かに反芻する。葵は本当に眼がいい。
「最後の正拳なんか、気合の一発って感じですごかったですよね。あの綾香さんが弾くの
で精一杯でしたもの」
必死で繰り出したあの正拳。あの時、私の心にあったのは、対戦相手の綾香じゃなくて、
傍で見ていた藤田だった。
・・・・・・・誰かのために戦うって、こういうことなのかな。
賭け試合、どこまで綾香が本気かわからないけど、やるんだったら、絶対に勝たないと。
「よし、まずは、綾香から一本、だな」
「頑張りましょうね、坂下さん。私も、藤田先輩も応援してますから」
葵がいい笑顔で言う。私も頑張ろう。2つの夢をかなえるために。
空手と、そして、藤田と。