ばしっと大きな音がする。綾香がぎりぎり、私の正拳を弾いたのだ。
「寸止めって言ったじゃない」
「あ、ごめん」
お互いに肩で息をしながら、動きを止めた。
「今日は、ここまでだな」
藤田が言う。
「そうね。でも安心したわ。好恵の腕も鈍っちゃいないし、何よりまだまだ熱くなれるみ
たいだもの。余計な心配だったわね」
「ごめん、本当に当てにいってしまって」
「いいわよ、気にしないで。そうね、今度は機会を作って本気でやりましょうか。何か賭
けたりして。ね、浩之」
「そうだな、でも、賭け試合は感心しねぇな」
「いいじゃない、ねぇ、好恵」
・・・・・・・・。綾香、気がついてるな。私は藤田に惚れてること。まぁ、ばれるとしたらこい
つだろうと思っていたけど。
「そうね。それもいいかも。それまでに、綾香を倒す秘策を練っておくわ」
私が笑顔で言うと、綾香も笑顔で手を差し出した。
「じゃ、私はこの辺で帰るわね。真面目に練習しなさいよ」
ひらひらと手を振って、綾香は階段を降りていった。もう、日も暮れかかっている。
「さて、俺たちも片付けて帰るか」
藤田の合図で、私たちも帰り支度を始めた。