「さて、そろそろかな」
組手に備えてストレッチを始めようとすると、綾香が立ち上がって手を差し出してきた。
そのまま二人でストレッチを始める。
「ねぇ、好恵」
「なに」
「最近、後輩の指導ばっかりで、自分の練習してる暇ないんじゃない?」
「そんなことないわよ。後輩の指導でも自分の練習には役立つもの」
「ふうん。せっかくだし、好恵の腕が鈍ってないか、確認してあげようか」
「え?」
「久しぶりに組手をやらない?」
綾香と組手?しかも藤田の前で?
少し考え込んでしまったけど、結局、私はうなずいた。
「いい、葵。上級者どうしの組手を見るのも勉強のうちよ。しっかり見ときなさいね」
「はい」
綾香の言葉に葵がうなずく。
「浩之もね」
「まぁ審判だからな。いやでも見るしかねぇだろ。でも綾香、いいのか?スカートのままで」
「うん?私は気にしないわよ。別に浩之にだったら見せても全然構わないし」
綾香の言葉を聞いて、私はなんだか不愉快になった。
「いいから、始めましょう」
「はいはい。スタイルは空手で、3分間、一本制。寸止めでいいわよね」
「ええ」
「じゃ、浩之、合図ちょうだい」
「おう。坂下。頑張れよ」
突然言われて、私はうなずくことしか出来なかった。顔が、熱い。
「何よ、浩之。私には何もなし?」
「じゃあ、綾香も頑張れ」
「じゃあって何よ。まぁいいわ、始めましょう」