「あっ…」
 ゆっくりと流れ出す赤い血は、
 みるみる大きな玉となって、
 ある大きさになると重力にしたがって下に流れてゆく。
「いたたた…」
 あたしは流れる血をぼぉっと眺めていた。
「詩子、大丈夫ですか?」
 茜はとっさにあたしの親指を口に含む。
 とてもやわらかい、茜の口の中。
 優しくその舌で傷口を舐めてくれる。
「鉛筆を削るときにそんな冗談言ってよそ見しているからですよ」
 茜の舌はとても暖かくて、それでいて柔らかくて、
 あたしはただ、その茜の唇だけを見続けていた。
「今度そんな冗談したら、無水アルコールで消毒しますよ」
「わかったよぅ…」
 あたしはただ、そんな茜の様子をぽ〜っと見ていることしかできなかった。