「私、藤田には嫌われてるものだと思ってた」
ぽつっと、ついつぶやいてしまった言葉。藤田は怪訝な顔をして振り向く。
「なんで」
「藤田から見たら、私は葵の夢を邪魔している存在だから」
私は、目を合わせないように正面を向いたまま答えた。
「夢を邪魔している、とは思わないけどな」
藤田の意外な言葉に、私は足を止めた。
「だって、葵がエクストリームをやるのに反対して、無理にでも空手部に入れようとした。これは、夢の邪魔をしているって言わない?」
「でもよ」
振り向いて、藤田は言った。
「そこには坂下の夢があったんじゃないのか?」
私の、夢?
「そうね。私、また葵といっしょに空手がやりたかった。それが、夢といえば夢だったのかもね」
「だったら、坂下がやったのは夢の邪魔とは言わねぇよ。それは、夢をぶつけ合ったって言うんだ」
きっぱりと言い切って、藤田はまた、あの笑顔を見せた。
なんて、奴なんだろう、こいつ。あれだけ、私は、葵の夢を踏みにじるようなことを言ったって言うのに、それをその一言で許せてしまうと言うの?
「坂下も、葵ちゃんも、自分の夢をかなえるために頑張ってることには変わりないだろ。その途中で夢がぶつかることもある。そういうの、うらやましいと思いはすれ、どっちか捕まえて酷い奴だなんておれは言えねぇよ。俺にはそんな確固たる夢なんてものが無いからな」
「藤田には、そういう、目標みたいなものが無いんだ」
「ない。だから、そういう夢を持った奴を見ると、応援せずにいられねぇ」
「そっか」
だったら、私のことも応援してくれるだろうか。歩き出しながら、ふっと考える。藤田に応援してもらえれば・・・もっと強くなれそうな気がする。
「だからよ、坂下も応援するぜ。葵ちゃんが先約で入ってるから、ぶつからない限りは、って但し書きがつくけどな」
「あ、あ、ありがと」
またあの笑顔で藤田が言う。私の顔がまた熱くなる。
心を読まれたような気がして、かなり、恥ずかしかった。