「ぱちぱち」
 拍手が会場内に響いていく。
 その拍手とともに会場が溶明し、ピアノの周りをひときわ明るくスポットライトが照らす。
 そこには詩子とその幼なじみの里村茜、さらにもうひとりの男、3人で手をつないでお辞儀をしている。
 その男、茜のクラスメートの折原浩平かと思いきや、少し違うらしい。
 会場内の観客は誰もがその男を見ている。
 今まで見たことのない人物にざわめきは広がる。
 やがて3人は高台から階段を下りて、リングへと進む。
 近づいてきたその男の顔を食い入るように見る会場内。
 そんなざわめきを気にする風もなく、アナウンスの声が入場を宣言する。
『ベートーヴェン作曲、奏鳴曲第26番『告別』第3楽章『再会』、
 演奏は柚木詩子! その幼なじみの里村茜と城島司とともに入場!』