<連続マターリ小説・第三章>

 店の中には既に何人かの先客が居た。昼時だから当然か。
 俺は澪を連れ、一番奥の2人席へ陣取った。
「いらっしゃい。ご注文は何にする?」
 注文を取りに来た店のおばちゃんに、俺は自信満々にこう答えた。
「チャレンジデーの挑戦をするぞ。2人で」
 一方、澪はと言うと
『お寿司10人前なの♪』
 ニコニコしながらスケッチブックを掲げて見せた。冷静に考えると凄い内容だが。
 店に居た他の客が一斉に俺達の方を見る。ある者は好奇の眼差しを。ある者は
疑惑の眼差しを。
 「へぇ…若いのに自信有るみたいだね。それじゃあ、挑戦してもらおうじゃないの」
 おばちゃんは伝票に書き込むと、そういい残してカウンターの奥へ消えた。
 「なぁ澪、お前本当に大丈夫なのか?いくら寿司が大好きだからって、30分で
10人前なんて、並みの人間じゃあ難しいぞ」
 …並じゃない人間が約一名、俺の先輩にいるが…
 だが澪は、自信満々に俺にスケッチブックを見せた。

 『あのね』
 『心配ないの』
 『二人で完食するの♪』
 一体その自信はどこから湧いてくるのやら。そう思いつつも懸命な俺は口に出す様な
真似はしなかった。
 『あのね』
 『頑張るの』
 そうこうしている内に、最初の1人前目の皿がやってきた。避けられない運命の
歯車が、今まさに、まわり出そうとしている…

(…ひょっとしたら続く)