演劇部の昼の練習が終わって、わたしは部室に戻って来た。
腕時計を見ると、昼休みは残りわずかになっていた。
どうしようかと時計の針を眺めて考えていると、
一緒に戻って来た同じ2年の演劇部員の女の子に声を掛けられた。

「もうあんまり時間がないね。お昼どうしよっか? 澪」
『困ったの』

わたしはいつものようにスケッチブックに字を書いて答える。
そして、わたしとその子はお互いの衣装を見つめあう。
舞台衣装から制服に着替えている時間はなさそうだった。
仕方なく、この格好のまま学食に向かうことにした。

(一人では恥ずかしいけど、二人なら大丈夫なの。…たぶん)

学食に着くと、もう一人の子が席の確保をして、わたしが料理を取りに行くことにした。
相談の結果、早く食べられそうなものということでメニューはラーメンになった。
カウンターで並んでいる間、周りの人たちに舞台衣装を物珍しそうに見られる。

(うう、やっぱり恥ずかしいの)

しばらくして順番が回ってきたので、ラーメンを注文する。
渡された二人分のトレイを手に持つ。

(重いの。バランス取るのが難しいの)

ふらふらと危なっかしい足取りで、わたしはトレイを持って席へ向かって歩く。
ふいに、わたしは人混みの中に見覚えのある1人の男子生徒がいるのに気付く。
ラーメンが載ったトレイを持っている事をすっかり忘れて、
わたしは大好きなその男子生徒に力いっぱい飛びつく。