アパートの階段の踊り場まできたところで、再びまゆちゃんがよろめいた。
「おいおい、ここでリバースはまずいぜ。もうすぐだから、な?」
「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・」
全然大丈夫そうに聞こえない声でまゆちゃんが呟く。そしてそのまま手摺りに手をついて動かなくなってしまった。
しばしの沈黙。それがどれほど続いただろうか・・・
「千堂君・・・ボク、チーム一喝抜けるよ・・・」
「まゆ・・・ちゃん?」
うつろな瞳でそう切り出したまゆちゃんの目尻には、にわかに涙が浮き出していた。
「だって・・・ボクなんか、何の取り得もないんだよ・・・玲子ほど積極的でもないし、美穂ほど行動力もないし、
 夕香ほどおしとやかでもない・・・全部中途半端なんだよ。話し言葉だって男の子っぽいし、ドジだし・・・
 いるだけ、迷惑なんだよ。足手まといなんだよ・・・」
次第に彼女の声が怒気をはらんでいくのがわかる。
「まゆちゃん・・・何いってんだよ!長短あってこその人間だろ?今は自分の短所ばかりしか見えてないからそう思えるんだよ。
 それに、まゆちゃんのいないチーム一喝なんてそれこそつまんねーよ。4人そろってこそ、だろ?チーム一喝は」
自分でも怪しいと思う下手なフォローが口をつく。俺は逆にまゆちゃんを苦しめているのではないか・・・
「ありがとう・・・ごめんね、千堂君にこんな話・・・ほんとやだよね、勝手に躁になったり鬱になったり・・・全部お酒のせいにして・・・。
 本当は慰めてほしくてこんなこと言ってるんだよ・・・ボク、こんなんだから・・・千堂君の気持ち知ってるのに・・・
 それでも千堂君にかまってもらいたくて・・・でも千堂君は・・・あ、あれ?ボク何言ってるんだろ?
 へへ、変だよね、可笑しいよね、今日のボク・・・あははは・・・」
溜めていた涙が堰を切ったように溢れ出ていた。
同時に、俺はまゆちゃんの細い身体を強く抱きしめていた。