「あー、美汐。ちょっと目つぶっててくれるか?」
 少し疑問の色を浮かべたが、美汐は大人しくそれに従った。
 左手に、何かがはめらる感触。
「あっ…」
 美汐はそれが何だかすぐに分かった。
「あー、誕生日おめでとう。美汐」
 左手の薬指に、きれいな…、本当にきれいな指輪がはめられていた。
「祐一さん……。ありがとうございます…」
「ん、まあ安物だけどな。デザインを選ぶのに悩んじゃって遅れたんだ」
 美汐は、それが安物でない事に、すぐに気づいていた。
 自分のために頑張って買ってくれたと思うと、本当に嬉しかった。
「本当に、ありがとうございます……」
 美汐の頬を、一筋の涙が伝う。
 二人は自然に近づきあい、影がそっと重なった。
 冷え切った唇に、暖かい感触。

 それは、美汐にとって、最高の誕生日だった。