「はぁ…」
 今日何度目かのため息。
 白い息を目にするたび、一段と寒さを覚える。
「まったく、こんな寒いところにいつまで待たせる気なんでしょうか」
 さすがの美汐も愚痴をこぼしてしまうほど、待っていた時間は長い。
 それに、寒い。いくら寒さに慣れていても、やはり長時間外でじっとしてるのは堪えるものだ。
 それに、今日は美汐にとって特別な日だというのに…。
 我慢の限界が近づき、もう帰ろうかなんて考えてたころに、ようやく目的の人物が顔を見せた。
「すまん、待ったか?」
 急いで走ってきたのか、ぜえぜえと肩で息をしている。
 まあ、いくら急いだといっても一時間以上の遅刻だが。
「すごく待ちました。あまりに遅いので、今帰ろうかと思ってたところです」
 ぷい。と、向こうを向いてみせる。ちなみに、怒っている。
「いや、本当に悪い。ちょっと色々あってな」
「色々って、何ですか?」
 不機嫌そうに尋ねてみたら、すこし照れたような表情をして祐一さんは答えた。
「ん〜…、まあ後で教えるよ。それより待たせて本当に悪かった」
「………反省してるようなので、まあいいでしょう」
「お詫びに、夕食をご馳走しよう」
「最初からその予定のはずでは?」
「…相変わらず、するどい突っ込みだな」
 そんないつものやり取りをしながら、商店街へと歩き出した。
 やはり、遅刻されたとはいえ、恋人との特別な一時だ。
 美汐の表情には、さっきまでの怒りの色は消え去り、笑顔一色になっていた。