「みなさん、応援ほんとうに有り難うございました」
 照明に照らされた秋子は、主婦らしく、慎ましやかなお辞儀をした。
 それから観客席を見渡し、にっこり。

「つまらないものですが、応援してくださったみなさまに、お礼としてこれを…」

 そこで言葉を止め、愛おしげに懐のものを撫でる秋子。
 金色のそれを目の当たりにした観客席がざわめきだす。
 そのうち一人が立ち上がって走り出し、二人、三人、十人、百人、いや全員、
観客は悲鳴を上げて非常口に殺到した。
 スタジアムはあっという間に無人と化した。

「……」
 ぽかーんとしていた秋子であったが、気を取り直し、後ろの居候達のほうに振り向いた。

「あぅ」「う、うぐ」
 視線を合わせてしまった子羊たちの鳴き声。

「さ、いらっしゃい」
 秋子の声は何処までも優しかった。

「あぅぅ」「うぐぅぅぅ」

「まぁ、いい子ね」
 秋子の笑顔は聖母さまのようだった。

「あぅぅぅぅ!!(涙」「うぐぅぅぅ!!(涙」

 彼らは逃げられなかった。