「やめてくださいっ!!」
微かに聞こえてきた悲鳴に、久瀬は足を止めた。
人気のない路地裏の薄暗がり。声はそこから聞こえてきたようだった。
見ると、軽薄そうな男たちが3人ほど。
そして、彼らに囲まれるようにして、少女が1人。

久瀬は路地裏に歩を進めた。その途中、手近に落ちていた木の棒を拾っておく。
「あん? なんだお前は?」
男達が闖入者に気付いた。縄張りを荒らされた野獣のように、敵意を露にしている。
彼らに囲まれていた少女と久瀬の目が合った。
「……久瀬さん!?」
「倉田さん?」
男達に囲まれていた少女は倉田佐祐理だった。
久瀬と佐祐理、両者の顔に驚きが浮かぶ。

「なんだ、手前ら知り合いか?」
「悪ぃが佐祐理ちゃんは今俺らと遊んでんだよ。邪魔すんな」
男達の内の二人が久瀬に詰め寄り、粗野な態度を剥き出しにして恫喝する。
が、久瀬は動じることなく冷めた目で彼らの物腰を見やる。
(フン……単なるチンピラか)
「何とか言ったらどうなんだ、あん?」
「あんまり顔を近づけないでくれないか。息が臭い」
「なっ……!」
「舐めてんのか、手前!」
「ああ、それと忠告だけど、君達あまり喋らない方がいい。
語彙の貧困さと知能の低さを露呈するだけだ」
冷笑を一つ。それが引き金だった。