「そういう事なんかもあった訳だ」
「へえ……可愛いですね、なんか、そういうのいいなあ……あ」
「だろ? それが今じゃなー、風邪でブッ倒れても
『あら、兄さん、風邪? 部屋から出てばい菌ばらまかないでね』
 だぞ! あの当時の可愛い可愛い理奈はどこへいったんだ!?」
 ……英二さーん。
「ふうん、具体的にはどんなことされたい訳かしら?」
「そりゃあ、理奈がお手製のおかゆかなんかを作ってくれてだな
『はい、兄さん……あ〜ん』って感じでだな……って理奈さんこんにちわ」
「冬弥くん。ちょっと兄さんとスケジュールについて小一時間問い詰めたい
ことがあるから、兄さん借りていいかな?」
「どうぞご自由に」(即答)
「り、理奈さん……今後の予定ってなんなのかな?」
「おトイレは済ませた? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ
震えて命乞いをする準備はOK?」
「いだっ、いだだだっ、耳っ、耳がちぎれるっ」
 ……さようなら英二さん。
 貴方のことは忘れません、多分。
(抜けるような青空に英二の爽やかな笑顔)

 数日後。
「うわははは、本当に風邪を引くとは思わなかったよ」
「兄さん……そりゃね、風呂上りに『閃いた!』って裸で
シンセサイザー弾いてたらね、風邪引くわよ」
「いや、久しぶりに、こう、作曲の神様みたいなのが降りてきたんだよ」
「作曲の神様は健康に無関心なの。
 さ、今日は一日休まないとダメよ。事務所の方には私から連絡しておく」
「うー、すまん」

<さらに続く>