「お前のマスターだ」
初冬という時期だけに誰もいない寂しい場所。
片田舎の山の斜面の中腹。
そこにセリオがずっと探していた人がいた。
彼女はじっとそれを見つめて動かない。
手持ち無沙汰になった俺はセリオに話し掛ける。
「お前を手放してから金を貯めて買い戻そうとしていたらしい。
 でもその時お前は更に別な場所に売られていた」
話を聞いているのかいないのかセリオの表情から読み取れない。
俺はかまわずに話し続ける。
「それから散々探しまくったみたいだな。
 だけど無理がたたってしばらくしてから亡くなったそうだ」
長い沈黙、そして動くセリオの唇。
「マスター、やっと会えましたね」
それは美しいけれど悲しい姿だった。
ずっと想い続けていたマスターの為にセリオが泣いている。
俺はたまらず彼女から目をそらす。
セリオを残して勝手に死んだ馬鹿野郎。
どこかでこいつの姿を見ているか?
おまえの墓を抱きしめて泣いているセリオを。
俺には痛々しくて見ていられない。
せっかく少ない小遣いを貯めて買った服も台無しじゃないか。
再開を楽しみにしてお前の好きなだった服を選んだのに
当の本人がとっくにいないんじゃ笑い話にもならない。
畜生・・何でこんなに悔しいんだ。
何でこんなに切ないんだ。
答えはわかっている。
俺は嫉妬しているんだ。
セリオの為に人生の全てを賭けた男に。
こんなにもセリオに愛された男に。