溶けてゆくミルクの渦を見つめながら、ため息を一つ。
街には冬の気配が迫っているというのに、僕は未だに進路を決めかねていた。
血は争えないのだろうか、技術者の両親を持つ僕は、やはり理系分野に才能があるらしい。
ならばその才能を生かせる方面に進めばいい、と人は言うのだろう。(実際、教師も両親もそう言った)
けれど、それをためらわせる事情があるのだ。それは――
「どうかされましたか?」
「わっ!」
思索にふけっていた僕は、彼女の接近に気付かなかった。
「あ、いや、なんでもないんだよ…セリオさん」
その理由たる彼女に向かって、僕はぎこちない笑みを返した。

僕はセリオさんに恋している。
最初は罪悪感だった。彼女の色違いの瞳、その原因を作った後ろめたさから、彼女のことを見つめていた。
でもそうしている内、彼女の立ち居振る舞いから目が離せなくなっていた。
彼女がヒトでないということは解っている。
だけど、ロボットだと割り切ることもできないんだ。
だから僕は理系、特にコンピューター関連に進むのが怖い。
いつか彼女に内蔵されたプログラムを理解してしまうかもしれないから。
彼女の心が作り物だということを確認してしまうかもしれないから。

「…さん、申し訳ありません、そろそろ休憩時間なのですが」
「…このまま居たらいけないかな?」
「貴方が望まれるのでしたら、問題ありません。
 ただ、充電している間、私はお相手できませんが」
「それでもいいよ」
「解りました」
彼女は入り口のプレートを「CLOSED」に裏返す。
そしていつもの場所に座り、充電のための準備を始める。
僕はすっかり冷めてしまったコーヒーを飲みながら、彼女の仕草を眺めていた。