「結婚しました
  元気で
   暮らしています」

一通の手紙。
家族の写真を添えて、送る。
差出住所は、まだ書けないけれど。

いろんなものを捨てて、あたしたちは逃げ出した。
仕事、学校、友人、野望、ファン、
そして、もう一人の、あたしじゃないあたし。

そうやって逃げてきたのに、あたしは、和樹さんを戻したがっている。
夢を追っていたあの頃。
できれば……和樹さんには夢を追ってもらいたい。

でも、それはあたしのわがままだって、よく分かってるけど。
和樹さんが自分だけ夢を追いかけるはずはないから。

それにまだ、あたしも逃げていたいのかもしれない。
戻るのが怖いのかもしれない。
なにより、和樹さんとの今の生活を、守っていたいのかもしれない。

迷ったけど、手紙を、送ります。
たった三行に、何年もかけてしまったけど。
いつか……帰れる日のために。