>>884

 婚礼の晩、いわきりたんが浜辺でひとり誰彼ていると、もと
戦友のみどぅが現れます。なぜか『う』が小さいのは、
セフレの影響でしょうか。
 みどぅはいわきりたんに軍用ナイフを渡し、それでせみまるを
一思いに殺してしまうように命じました。それが泡にならずに
すむ唯一の方法だと言うのです。
 いわきりたんはナイフを受け取ると坂神家に戻り、せみまるの
部屋に忍び込みます。せみまるの部屋では、たかことせみまるが
同じベッドで眠っていました。
 いわきりたんの、蟋蟀にも悟られない隠形法は失っていましたが、
せみまるたちが起きることはありませんでした。きっと彼らは、
ふーッ、ふーッ、とか、ぐおおおおおおっ、とかいったことをやって、
疲れていたのでしょう。
 せみまるの上で、いわきりたんは軍用ナイフを振りかざします。
月の光を受けて、ナイフはぎらぎらとした光を照り返しています。
そこで、いわきりたんは凍りついたように立ちすくみます。
やがて東の空から朝陽が射しはじめると、小さくため息をついて、
そっと坂神家を後にするのでした。
 いわきりたんは浜辺で、手にしていたナイフを捨てました。
それは波にさらわれると、水面をまるで血のような赤い色に染めました。
 いわきりたんはそっと立ちあがり、小さな水飛沫とともに、
海に身を躍らせました。そして本当に、海の泡となって消えて
いったのです。しょせんいわきりたんは従軍イアン・ソープ嬢だから。
 おしまい。