思い出の中の神尾さんは笑っていた。ずっとずっと笑っていた。
それが、とても大事な物だって、初めて気づいたから。
急に泣き出して、私が困ったときも、笑って謝りに来てくれていた。
一番つらかったのは神尾さんのほうだったはず。
誰かと話していることができないと分っていても、ずっと笑顔で
話し掛けてきてくれた。その笑顔が、どれだけ儚いのか。
大事だったのか。
なんで遊んであげられなかったのか。
なんでしゃべることすらできなかったのか。
電話の時だって、ずっと「面倒くさい」とおもって話を聞いていた。
自分が情けなかった。神尾さんは「私は強い子だから」って
笑ってた。一番弱かったのは、自分だった。初めて気づいた。
でも、それも遅かった。
気づけば、みんな泣いていた。雰囲気がそうさせたのか、
それとも神尾さんの思い出がそうさせたのか、それはわからなかったけど。
でも、失ったものは戻ってこないから。

神尾さんが居なくなって、幾日かが経ち、みんなそれぞれの生活を
続けていた。このまま神尾さんは、思いでだけの存在になるのだと思っていた。
でも、その時は、訪れていた。本当に大切な笑顔をもった少女。
「にはは、ただいま」