深々と礼をする祐一に、微笑みを返す芹香。
 芹香は目の端で角の暗がりに立つ人物を認め、小さく会釈した。


「意外にいいやつだね、あんた」
「天使は誰だって善良なの」
 暗がりに立っていたのは、ルミラとユンナだった。
 照れ隠しなのか、顔を背けるユンナに、にやつくルミラ。
「でもさ、驚いたよ。あのお嬢ちゃんにいきなり召喚されて、一弥くんのこと尋ねられたときはさ。
地獄の知り合いに探してもらったら、一弥君、そっちにはいないらしくてね」
「あなたに頼まれたときは驚いたわ。でもね、断れないじゃない。一弥君のことで苦しんでる、助けてあげたいって言われたら、さ」
「はは、やっぱりあんた、いいやつだ」
「だから、天使は全員いいひとなの!」
 二人は見つめ合った。それぞれの瞳には、譲れない意志の炎が燃えている。
「負けるなよ」
「わかってる。あなたもね」
 吸血鬼と天使は、空中で手のひらを叩き合わせると、別の方向へと歩き出した。

 ああ、月は、今夜も輝く。
 勝者にも、敗者にも
 生者にも、死者にも
 これからの未来にも
 そして
 これまでの思い出にも
 月は等しく、穏やかで優しい光を贈り続けるのだ。


 このトーナメントに、幸いあれ。