倉田佐祐理の控室には、先ほどから、祝福を贈ろうと、彼女の知人たちが集まっていた。
「佐祐理さん、おめでとう」
「倉田先輩、おめでとうございます」
 祝辞のたびに、はぇ〜と恐縮の声を上げ、ありがとうございますと答える佐祐理。
 と、そのとき、控えめなノックの音が響いた。
 ドアを開ける祐一。
 そこに立っていたのは誰あろう、対戦相手である来栖川芹香とその執事だった。魔女のいでたちをした芹香は、
一同の視線を浴びると、そのぼんやりとした表情を変えることなく、小さくお辞儀した。
「倉田佐祐理様にお祝いを述べに参りました」
 執事が口を開いた。
「一回戦突破、まずはおめでとうございます」
 と、そこで芹香はぽそぽそと老人に耳打ちする。頷く執事。
「それと、実は、お客様をお連れいたしました。差し出がましいようですが、ご本人の強い希望と言うこともありまして…」

 その言葉も終わらぬうち、小さな人影が、部屋に入ってきた。
 その人物を何気なく見つめた佐祐理だったが、突然後ずさりした。
 少年だった。あどけないその面立ちは、何処か佐祐理に似ていた。正装し、花束を持った少年は、ほほえみを浮かべたまま、
佐祐理に近づこうとした。
「キャアアアア!」
 金切り声を上げたのは佐祐理だった。部屋の隅にうずくまると、背を向け、頭を抱えて、イヤイヤを繰り返す。
「許して! 許して、一弥ぁぁ!」
 一弥と呼ばれた少年は立ち止まり、とまどった表情をした。どうして、と問いたげに芹香の方を振り返る。
「許さない! 佐祐理を傷つける人は許さないからっ!」
 突然、舞が芹香につかみかかる。間一髪、立ちふさがる長瀬。
「乱暴はやめていただきたい」
「佐祐理は苦しんでいた! あの子のことを気にして、ずっと! それが、忘れかけた頃になんで、こんな残酷なことをするんだ!」
「言ったはずですぞ。"ご本人の強い希望により"と」