バスルームに水音が響く。
あれから数時間、さすがに根が尽きて、
一休みした後、俺たちは互いの身体を洗い流していた。
キュッ、とッシャワーの栓を締める。
ようやく、楓ちゃんを元どおりの姿にすることができたようだ。
「晩御飯、遅くなっちゃうかもね」
「…だいじょうぶ。下ごしらえとかはぜんぶしてあるから、
あとはお鍋に火をかけて、ジャーのスイッチ入れるだけです」
楓ちゃんの料理の上達具合は見事なものだった。
料理だけじゃなく家事全般に渡って、立派に一家を守る専業主婦を勤め上げている。
いまや梓も形無しだ。
「…お父さんには、いっぱい食べてお仕事がんばってもらわないと」
結ばれる前は見れなかった、幸せそうな微笑みを浮かべて言う楓ちゃん。
俺の淫らな欲望をすべて受け止めてくれて、
さらに日常でも文句ひとつ言わず尽くしてくれる……。
なんで俺なんかにそこまでしてくれるんだろう、なんて思う。
……俺が楓ちゃんを愛してるのと同じくらい、
俺のことを愛してくれてるから、なんだろうな。
「……ね。きれいになったから、キスして……」
あ、と思った。
ずっとキスして欲しかったのに、すべてを洗い落とすまで、我慢してたんだ。
いままで気付いてやれなかった自分が情けなかった。
頭を髪の毛ごとぎゅっと抱え込んで、謝るかわりに、長い、長いキスをした。
(ふたりで、120歳過ぎるまで生きたいな……)
唐突に、そんなことを俺は思った。
そうすれば、今度はあと100年、こうしてふたり一緒のまま居られるんだから……。