「楓ちゃん、ちょっと」

耕一は、一人仏壇の前で手を合わせる少女に、幾ばくかの逡巡の後、静かに声をかけた。
そして、自分の心のわだかまりを解消する為に、胸にある疑問を音にする。

「…はい」
「どうして、俺の事を避けるんだ?」
「……」
「俺、何か…した、かな。その…」
「……」
「だとしたら、俺…」
「言えるわけ…ないじゃないですか…」
「え?それは…ちょ、ちょっと待っ…行っちゃったか…」

耕一から逃げ出した楓は、自室へと駆け込み部屋に鍵をかけた。
胸の激しい動悸を何とか抑えようと、まだ谷間にならない胸の中央に手をそえる。

「言えるわけないじゃないですか…。
何時も、貴方の事を想って…慰めてるなんて…」

顔が熱い。
頬が火照っているのがわかる。
どうして…私は耕一さんが目の前に立つだけで、こんなにも嬉しいのだろう。
私は、喜んではいけないのに。
私の想いは、耕一さんに届けてはいけない想いなのに…。