古河渚は、私を「ふうこちゃん」と呼んだ。

 他の人間は上の名前で呼ぶか――ぎりぎり聞こえるくらいまで声を落として「リス子」と呼ぶ。
 私が、いつも手に彫刻刀を持っているからだ。

 リストカットの「リス子」。

 彼ら/彼女らは、純粋な悪意から私をそう呼んでいるのだけれど、それは決して理不尽な悪意ではない。
 実際のところ私は定期的に手首を切っているのだし、悪意を受けるような生き方をしている。
 私は、そうした悪意を当然のものとして受け入れることができる。だから、傷つくこともない。
 私は選んだのだ――この立場を自ら作り出したのだ。どうして傷つくことなどあるだろうか?
 虚勢ではなく、あるいは開き直りでもなく、私は、因果を受け入れる。