(3行空け)
 噴水のある公園。私がこの街で一番好きな場所。そこがいつもの待ち合わせ場所だった。
 ややきつめの日差しの中、ベンチに腰かけて待つ。約束の時刻はとうの昔に
 過ぎていた。でもそれもいつものことではある。
「……それにしても遅いわね。たくっ、また道に迷っぐはぁっ!!」
 なにか塊が私の首を後方から締め付けた、もとい、まとわりついた。
「繭!! あんたねぇ、いきなりまとわりつくのはやめなさいって言ってるでしょ!」
「みゅ〜」
 はぁっ…、思わずため息がもれる。そしておかしさもこみ上げて来た。
 思えば思う程おかしな話だった。どんな些細な物音にも過敏に反応してしまう最近の私が、
 繭の接近には全くといっていいほど気づかない。……でもそれは当然なのかもしれない。
 私は知っているのだ。あそこを共に生き抜いた繭は、私にとってこの世界で安心できる、
 つまり危険で無いと判断でき、そして信頼できる数少ない存在のうちの一つである事を。
 浩平や瑞佳達と同様にあそこを生き抜いた仲間。警戒なんてする必要がない。
 だから近付かれても気が付かないのだろう。
「みゅっ」
 いつの間にか隣にきていた繭が、なにやら紙切れを差し出す。手紙だった。
「どうするの?」
「私は遠慮しておくわ」
「みゅ〜……、だったら私もいかない」
 そういって繭はベンチに腰かけ、私に体を預けた。数秒後、彼女はすやすやと寝息を
 たてていた。