「な、なによぅ…」
「和樹に謝りなさいっ!謝れっ!謝れえっ!!」
「い、行こ?なにコイツ、逆ギレして…」
「ほ、ホント…頭おかしいんじゃない…?」
「あっ、謝りなさいよっ!待て!待てえっ…う、うぐっ…うああああん…!!」
 捨て台詞を残して立ち去った二人を前に、詠美はまるで緊張の糸が切れたかの
ような勢いで泣き出しました。和樹を馬鹿にされたことが悔しくて、ただひたすら
悔しくて…もどかしい胸の奥からとめどもなく涙が溢れてきます。
「詠美、もういいんだ。もういいんだよ、詠美っ…」
「よくないっ!よくないようっ…!うううっ…うああああ…!!」
 詠美の気持ちは痛いほどにわかりますが、とりあえず人目に付くことは避けたほうが
賢明に違いありません。和樹は詠美を抱き寄せながら校舎の外へ連れだそうとしました。
しかし今度は詠美の怒りが納まらないのか、激しく身をよじってむずがったりします。
 どうにか詠美の癇癪が納まったのは校門の辺りまで来たときでした。ずっと詠美を
抱き寄せたままだったことに気付くと、和樹は慌てて彼女を解放し、そっとかいぐり
して泣きベソを吹き飛ばします。
 しかし詠美はすっかり打ちひしがれてしまったのか、視線をそらしながら、どこか
自嘲するような薄笑みを浮かべるのみでした。
「…格好悪いとこ、見せちゃったわね…。笑ってもいいのよ、あたしのこと…」
「オレの前では無理すんな。いつものお前でいてくれよ…。お前はくいーんだろ?」
「あっ、あたし…ぜんぜんくいーんなんかじゃないっ…」