その後、浩平が叔母に引き取られ、瑞佳との出会いを果たしたことは彼女も良く知るところである。
「えいえんのせかい」については、瑞佳は最初、浩平の話を「信じられない」といった面持ちで聞いていたが、最終的にはその全てを信じざるを得なくなっていた。
 彼女は「盟約」の内容、すなわち「えいえんはあるよ」の一言で、かつて泣き暮れる浩平を慰めた幼い日の出来事を記憶の奥底から発掘することに成功していたし、何よりも瑞佳の目の前で浩平が不可思議な姿の消し方をしたのはまぎれもない事実だったからである。
 無論、この頓狂な話をするのが「浩平だから」という点も大きい。瑞佳は浩平にそれほどの信頼を置いていた。
 それらを全て話し終えた時には、コーヒーはすっかり冷めきっていた。

「悲しかったんだね……浩平は」
「ああ……悲しかった。その時のオレは、あんな楽しい日々がずっと続くと無邪気に信じてたんだ……」
 ふたりは暫し口を閉ざした。部屋が静まり返る。普段は意識することのない、壁に掛けられた時計が秒針を刻む音のみがふたりの耳に響いていた。
 その静寂を破ったのは、瑞佳の方が先だった。うつむきながらポツリと口にする。
「ごめんね、浩平……」
「なんで謝るんだ?」
「だって、わたしは浩平を助けられなかったもん」
 そう言って顔を上げた瑞佳の頬を水滴が伝った。声はくぐもり、震えていた。
「わたしは何もわかってなかったんだよ……浩平の苦しみも、悲しみも。だからわたしは浩平に無責任なことを言っちゃったんだね。それで浩平は……ごめんなさい……」
「違う、違うんだ!」
 瑞佳の自分を責める、絞り出すような悲痛な発言を遮って浩平は叫ぶように言った。