列車はみるみる小さくなっていく。
俺たちはしばらく、黙ってそれを見つめていた。
次の列車は、一時間後だ。

「-----さて。 観念して、教えてもらおうじゃないか」
うー、と形のよい眉を僅かにしかめて、先輩が見上げる。
「……ゆあ」

「……天乃川ゆあ、だよ」
「そりゃあ、例の掲示板の-----?」
「……あれ、わたし」

再び満面の笑みを浮かべる先輩に、俺の思考は停止した。
「ハァ(゜д゜)?」
「……ひろゆきくん、会話で顔文字は無理があると思う」

そういう問題じゃない、と思った。
そんな事より、今は名前が大事だ。
「だって、あれは-----コテ名だろ?」

「……さあ、どうかしら? 名前に違いは、ないでしょう?」
そう言って、先輩が抱きついてくる。
「あと一時間、楽しく過ごしたいなら-----拘らないことよ?」

「うう、くそ」
即座に抱きしめてしまった俺の、完敗だ。
だけど、それでも俺は満足だった。

-----連絡だけは、絶えないだろうから。
あまり愛を語らうには、向かないところの気もするけれど。