……暗闇の世界に、ふたたび静寂が戻ってきていた。
動くものがなくなった開発室の中で、
YET11という名を使っていた吉沢努はひとり座り込んでいた。
「………………」
吉沢はぼんやりと、宙に視線を向けている
その周りには無数のソフトが転がっていた。そしてデータが削除されたPCが
まるでばらまいたビラのようにそこら中を占めていた。
「………………」
動かない吉沢は、しかし口元に笑みを浮かべていた。
スタッフが移籍したことはネクストン社長とビジュアルアーツ馬場社長の会談と、
その後のKEY設立によってわかっていた。やるべきことはやったのだ。
「やれやれ、一苦労だったな……」
かすれ声で呟いた。この人的損傷がどこまで再生できるものか自信はない。
限界を超えている可能性が高い。そうなったら、彼もこのままここで朽ち果てる。
「なあ、みんな……今回はハードだったよね」
そこに仲間達がいるかのような口調でそういってみた。
そして視線を落とす。
しかし――
吉沢はずっと持っていた疑問をまた心に浮かべている。
(ぼくらは――何をしていたんだろう?)
あまりにも、まわってきたツケが大きかったような気がする。
ゲームで触れてはならない領域に無責任に入り、
ふざけ半分でやってはいけないことをやっていた――そうなのかもしれない。
だがそれにしても、まわってきた責任は重すぎた。
『えいえんのせかい』
そんなものにまで直面しなければならなかったというのは、すこし行き過ぎた。