「真実はいつだってシンプルなところにあるんですよ。常に原点は大切なのです」
「原点ね」
 ふん、と下川は鼻を鳴らした。
「そうです、原点です―― どうして人はゲームを作り出したのか、なぜ今も作り続けているのか……それは自分の胸の奥にある痛みを少しでも忘れるため。そして我等、運命の失敗作たる魔法使いはいつもその間隙に棲んでいる……」
「え?」
 急にとんちんかんなことを言い出したので、下川はオルゴールから顔を上げて道化の方を見た。
 彼は相変わらずにこにこ笑っているだけだ。
 下川は、なんとなく釈然としない物を感じつつも、その特製のオルゴールに耳を傾けた。
 それは本当になんてことのない、どうでもいいような安物だった。それは下川の耳には簡単にわかった。
 だが……どうしてだろう。それを一小節聞いたとたんに、彼の眼から涙がぽろりと落ちたのだ。
 彼はその瞬間、急に思い出したのだ。
 散り散りになった昔の仲間のことを。その彼らが在籍していた頃に作った失敗作の曲の、その音を。
(あ……)
 そうだ――
 どうして忘れていたのだろう?
 その思い出があったから、彼はゲームを作ってきたのではなかったか。あのとき仲間達が与えてくれた喜びのために。それは決して出世するとか部下に偉そうに怒鳴るためではなかったはずだ――。