軽く腹を押さえてみる。不思議なことに-----痛みはほとんど、感じない。
なんだか自分の身体じゃないみたいに、痛みが遮断されている。
『余のもとへ……』
(誰よ、アンタ)
『我が名は、神奈備命……』
(カンナビノ……?)
何故だかその名を聞いたとき、冷や汗が出た。

 -----まずい。もしも、この痛みが完全に消えたなら。
 アタシは…アタシで居られなくなるのではないだろうか。

だらだらと嫌な汗をかきながら、わき腹を叩いた。
そうでもしなければ、この傷を忘れてしまいそうだった。
「-----痛ッ!」
「晴香さん!? 何をして-----」
この傷を。
この傷の、痛みを。

「晴香さん!聞いてま-----」
なんでもない、聞こえない。
だから、べたべたするんじゃない。
「晴香さ-----」
「-----うるさいっ!」

アタシは叫び、刀が一閃した。
一瞬遅れて、血が飛び散った。
「マナさんっ!?」
「は-----晴香!?」
七瀬とあゆが振り向くと同時に、アタシが袈裟斬りにしたマナが、血飛沫をあげて倒れた。