北川の意識が完全に闇に沈んだころ、ようやく自動扉が開いた。
彼が待ち焦がれていた援軍は、まるで手遅れだったのだ。

千鶴と繭は、非常用に設置された黄橙色の光をたよりに部屋を歩く。
しかしそこに、神奈の姿はなかった。そして、烏の姿も。

ただ一人と一匹の死体が、転がるだけだ。
「……北川くん……」
「今度は誰が----?」
繭が落ちていた銃と気絶した猫を拾い、蛇の死体を整えながら、疑問を口にする。
「……判らないわ」
「可能性としては神尾さん、巳間さん、それに七瀬さん…の三人ですね」
七瀬の名を呼ぶときに、少しだけ不安の表情が混じり込む。
千鶴にとって、そういう私情を繭が持つのは、悪い事ではないように思えた。
「そうね。あまり考えたくないけど…入り口から降りてきた途中では会わなかったでしょう。
 階段ですれ違うか、通気口から出たのでなければ…医務室が危ないかもしれないわ」
深刻な顔をして、繭が頷いたその時。

 「心配、ご無用よ」

-----七瀬の声が、聞こえた。
隣には刀を杖に立つ、晴香の姿がある。
「七瀬さん!」
繭が飛びつき、七瀬はその肩を抱きながら尋ねる。
「さっきの話だけど、つまり…?」
「…はい。七瀬さんたちがご無事なら、残っているのは-----神尾さんしか、居ないんです」
「そっか……」
余韻を残して呟くと、七瀬は北川の死体の前でしゃがみこむ。
今思えば移動中、北川は観鈴を気にしていたようだった。
それなのに------それなのに。