(ぬかったわ…)
神奈は再び上空に登り、その意志のみで存在していた。
再び、多くの力を失っている。
神奈が油断していたせいもあるが、彼女にとっての不幸も多かったのだ。

だが一方で、スフィーの死は彼女にとっての活力にもなった。
彰への恨みを抱いて死んだ彼女の無念は、神奈の好む味付けがこってりと為されていたからだ。
そのためトータル的には、それほど大きなダメージではないとも言える。
(……とは言え、このままでは…消えてしまいかねん)

依り代が、必要だった。

目処はもう着いている。
いや、その表現は正しくない。
一目見た瞬間に-----決めていた。
(あの娘。あの身体こそが。 余の力を、存分に引き出すであろう)

もともと神奈は、さほどその娘を評価していなかった。
能力にも、精神にも、神奈の価値感では強さを認める事ができなかったからだ。
だから岩場を移動していたとき、その存在を感じたにも関わらず、思うところは何もなかった。

だが鬼飼いの男の隣に立つ、娘の姿を直に視界に捕らえた時。
……認識は、急変した。