-----しかし、平穏の時は長く続かない。

突然、彰が真顔になって、観鈴に医務室へ帰るように宣言したからだ。
あまりの変貌ぶりに、観鈴は疑念を隠せなかった。
「……彰さん?」
「観鈴ちゃん…いますぐ、戻るんだ」
「いきなり、どうしたの?」
「銃声が、聞こえた。 きっと手当てが、必要になる」

…聞こえたような気もする。
でも、何かがおかしい。

観鈴は違和感から、素直に言うことを聞けなかった。
「彰さん…一緒に、戻ろ?」
しかし彰は頑なだった。
先ほどの微笑から想像もつかないような、観鈴を拒絶する冷たい物腰で返事をした。

「僕はもう少し月を-----独りで月を-----見ていたい。
 だからきみは、先に帰って欲しい」


観鈴が寂しそうに階段を折りて行くのを、彰は見守っていた。
どうにも僕は不器用だな、とうんざりしながら腕を組む。
動物に語りかける彼女の姿には、憐れみすら感じる。

しかし彼女の姿が消えるのを確認すると、くるりと振り向いた。

 空には、朧月。
 地には-----やはり朧げな-----光が、あった。