その様なことよりも壱よ、ちとお耳を拝借。すれと縁無きことなれども。
この度、拙者が江戸城に出城した折のことで御座る。松の廊下。
何か騒がしきことあり、一向に前に進めず。
何事かと思い見ゆれば赤穂藩主浅野内匠頭、吉良上野介に斬り付け候。
最早、阿呆奴がと。馬鹿奴がと。
そなたたち、刃傷事件ごときで松の廊下を占拠するとは一体何事か。
刃傷事件なり、刃傷事件。
何やら家老や御家人も打ち出で、一城総出で物見遊山で御座るか、まことに目出度きことなり。
「吉良上野介覚悟!」などと叫びしは正視に耐えず。
そなたたち、介錯し申し上げるから切腹せよと。
そも松の廊下とは本来閑散としているべき物なり。
擦れ違う隣国藩主との目だけで気まずき礼、
次の参勤交代は拙者か否か、その様な雰囲気こそ松の廊下の真髄。
火事と喧嘩と江戸の花は引っ込んでおれ。
して、漸く通れたと胸をなでおろし奉りし折、どこぞの芋侍が「殿中で御座る」とのたまいし。
そこでまたしても我が怒髪天を衝くが如きに候。
この時勢殿中などすでに過去の遺物なり。
したり顔して何が「殿中で御座る」か。恥を知れ恥を。
そなたは本当に殿中で御座ると叫びたいのかと問いたい。問い詰めたい。半刻弱ほど問い詰めたい。
ただ単にどさくさに紛れて歴史に残る言葉を言いたいだけなのではないかと。
江戸城中の先達である拙者に言わせれば、斯様な如き事態の適切な判断はやはり、
討ち入り。
これなり。
雪の降る吉良邸に陣太鼓を鳴らし討ち入り。これでござる。
して、見事仇を討ち果たし凱旋。これぞ武士道。
されどこれは切腹を覚悟の上でやらねばならぬ諸刃の刃。
未熟者には百年早いわ。
まあ壱の如き若輩者には、昼行灯で敵の目を欺くが関の山なり。


そんな事よりちょいと聞いてくれよ。
昨日、鏡見たんです。鏡。
そしたらなんかめちゃくちゃ不細工な奴が映ってるんです。
で、よく見たら、いや、よく見なくても、それ俺なんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
俺な、不細工にも程があるだろうが、ボケが。
超不細工だよ、超絶不細工。なんか頭も薄くなってるし。
デブ、ハゲ、オクメ、ニジュウアゴの4重苦か。死にて―よ。
子供が見たら泣き出すの。もう生きてらんない。
俺な、こりゃ人間の顔じゃねえぞ。猿だぞ。
顔ってのはな、もっと人間っぽくしてるべきなんだよ。
Uの字テーブルの向かいに座った奴がいつ気分悪くなってもおかしくない、
吐くか殴られるか、そんな顔じゃねーか俺は。
女子供は、すっとんで逃げる。
で、やっと落ちついたかと思ったら、
俺、鏡にむかって、ファイト、とか言ってるんです。
そこでまた自己嫌悪ですよ。
あのな、キャンディキャンディか俺は。ボケが。
二目と見られぬ顔して何が、ファイト、だ。
俺は本当に人間なのかと問いたい。
問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
俺、進化の歴史から取り残されてるんちゃうんかと。
クロマニョン人の俺から言わせてもらえば今、
俺の間での最新流行はやっぱり、整形、これだね。
整形失敗ギョクサイ。これが俺の生きる道。
整形っては金がかかる。そん代わり成功率が少なめ。これ。
で、それに韓国エステ(ぼたくり)。これ最強。
しかしこれをやっちまうと人間でないことを完全に認めてしまう、
諸刃の剣。真人間にはお薦めできない。
まあお前ら真人間は、俺のぶんまで幸せになってくださいってこった。