「一発やっかぁ」
スーツを脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれのジャージに着替えた。部屋の隅に行きうずくまる。
既にまつげを濡らし、俺の精神は俺の投薬を待つ。
身体を横にして電気を消すと、将来をかき消して、ぼんやりとした不安がそこにあった。
「俺のリタリン中毒のメンヘラだぜ」声に出していう。
「俺はやっぱメンヘラ」
やおら鞄の中から、ゴム束状態の抗うつ薬を取り出す、手にウィスキーをたっぷり取り、逆手で錠剤を押し出す、
「プチッ、プチッ」音が俺の精神中枢を更に刺激する。
「メンヘラたまんねぇ」嚥下に合わせて、身体を上下させる。
「男のメンヘラにゃあこれだよ」パキシルを飲み込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「いやだ、もういやだ」「喪男のメンヘラ」
頃合いをみてまめ球をつける。俺は自分のこのマイナス思考が嫌いだ。
黒い諦念だけが頭に残り、グチャグチャのゴミ部屋のバックに、涙垂らして、首を振り、左手で安酒を呷り、右手でジャラジャラと錠剤をつかむ。
鏡の中の俺は、日本一のメンヘラ男になっていた。
「ちきしょう誰にも見られたくネェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。
パキシルをもう一度効かせ、ウィスキーを追加すると、男へ向かってまっしぐらだ。
「男になってやる」「三十路後半のメンヘラの喪男」
「うりゃ、そりゃ」「プチッ、プチッ」錠剤をむさぼりながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」脳みその奥から、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり、俺を悩ます。
―楽になりてぇ――もっと生きてぇ―相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っ淵に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「男一匹 ! 」「がたがたっ」
椅子を蹴倒して、首に全体重がかかる。
真っ白い時間が過ぎ、目の前が暗黒に変わる。