>>1の続き

「彼」は医学の発展に大いに貢献したが、それだけでは活用法として不十分だと考えられた。
そこで開発者たちは、「彼」を一個の人間として、社会の役に立つ形で貢献させようと考えるに至る。

「彼」は数学・物理・語学と様々な英才教育を受け、人間で言えば秀才レベルの学生となる。
その成長速度は現実世界の数倍、数十倍、あるいは数百倍か……?コンピュータの速度に比例して敷居はどんどん広くなる。
ここで開発者たちは、何通りにも成長させた「彼」の中から最適なデータを選んで、エンジニアとした。
「彼」は勤勉に働き、現実世界の人間のために面倒な計算や研究開発を代行し、貴重な研究成果を数多くもたらした。
技術の発展はまさに加速度的であった。「彼」を高速で動作させる技術の開発を、「彼」自身が行うのだ。
高速化した人間シミュレーターは、現実世界の人間が一生をかけて行う研究を、わずか数年で成し遂げてくれる。
現実世界の人間は「彼」のおかげで膨大な恩恵を預かるに至った。
「彼」の活躍する分野はエンジニアに限らず、音楽家・小説家、果ては実業家になる者も現れた。
我々はもはや、「彼」なくして生きる術を持たなくなっていったのである。