第五十三話(最終話)[真の愚か者]
信成はコブラに乗って飛び立った。これからどこに行くのだろう…
「あいつだけは絶対許さん。勝手に俺をヘタレキャラにしおって…」

そこは横浜市保土ヶ谷区上空だった。信成はコブラを適当な場所に着陸させ、そこから歩いてある民家に向かった。
信成はその民家のインターホンを押した。一人の女性が応対した。それはオオクワの母だった。

「オオクワくんと二人で話がしたいのですが…」
母は喜んで要求に応じ、信成をオオクワの部屋へ案内した。正直、母もオオクワの愚かなありさまに辟易していたのだ。

「なんだお前は。信成だと!?信長の肖像画にも似てないし、無双の信長の顔グラにも似てないぞ。嘘つくな!愚か者め!」
信成は落ち着いて運転免許証を提示した。動かぬ証拠を見せつけられたオオクワは愕然とした。
自分より信成の方が年上だということを初めて知り、何より性格も作文で描いていた信成像と全然違うことにショックを受けた。
(なんてことだ。俺は今まで信成のことを何も知らずに、勝手な作文を書いていた。俺はなんて愚かなんだ。真の愚か者は俺だ……)

そしてオオクワは名誉毀損で訴えられ、裁判の末死刑が決まり、刑が執行された。

……という夢から目覚めたオオクワは、汗をグッショリ書いていた。
(何という悪夢だ。そもそも未成年が死刑になるわけないし、俺が愚か者なわけないだろ!)

しかし後日フィギュアの中継やニュースや新聞で信成を見る度に、オオクワはあの時の悪夢がフラッシュバックすることになった。
それでも、いろんな人物を勝手に自分と同レベルのキャラとして描いた罪に対する罰としては、軽過ぎるであろう。

オオクワはこれに懲りずに、その後も糞スレを立てては荒らすという暴挙を繰り返している。自分が「愚か者」「荒らし」だという自覚はもちろんない。

「真の愚か者」とは、オオクワのように、自分の愚かさに気付かないばかりか、自己中心的な考えで周りに迷惑を掛ける者のことをいうのだ。
きっとオオクワは良い死に方はしないであろう。

《完》