>>89の続き
 
              『新・核戦略批判』(岩波書店:豊田利幸)
              −168頁〜169頁−
              辛うじて、蒸し焼きを免れ、数週間、核シェルターに
             閉じ籠っていた人が地上に出たとき、何が待って
             いるのか。確かに外の「死の灰」による放射能は、
             核爆発直後に比べて大幅に弱まっているのだろう。
             だが、誘導放射性物質の働きは依然として残って
             いる。これに触れ、或いは呼吸すれば、長期に渡る
             放射能障害を受けることになる。
              それよりも深刻なことは、周りに累々として横たわる
             屍体の山、傷病者の群れが手付かずの状態にある
             ことである。屍体の処理、傷病者の手当てをする者は
             誰もいない。核シェルターで難を免れた医師、看護婦が
             治療に当たろうと思っても、医療施設、医薬品は
             なきに等しい。核攻撃を受けなかった都市や地方から
             救援を頼もうとしても、通信・運輸の全国ネットワークは、
             恐らく完膚なきまでに破壊されているのだろうから、
             それも到底期待することができない。それに一都市だけ、
             しかも一発だけの核攻撃などと言うことは殆ど考えられ
             ないから、国全体が、軍の中枢部を除いて、大混乱に
             陥ることは必至である。いや、軍の中枢部も実際上
             大きな混乱を免れないのであろう。