http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20030705k0000e040074000c.html
自転車:発明したのは日本人? 18世紀、彦根藩士が完成

 自転車に初めて乗ったのは日本人だった?――。
1861年にフランス人のミショーが発明したとされるペダル式自転車が、
それより129年早い享保17(1732)年に日本で誕生していたことを示す史料を、
東京の研究家が分析し、模型を復元した。
当時の日本の技術水準の高さを示すものと注目される。

 彦根藩士、平石久平次時光(ひらいしくへいじときみつ)(1696〜1771年)の
「新製陸舟奔車之記」(滋賀県彦根市立図書館所蔵)という文書で、
元自転車メーカー技術顧問の梶原利夫さん(60)=東京都北区=が、同文書と添付されていた設計図を分析した。
 文書によると、武州児玉郡(現埼玉県本庄市)で農民が作った
「陸船車」と呼ばれる乗り物が江戸で評判となった。坂道も上れる車だったという。
江戸屋敷詰めだった彦根藩士が、天文学などで業績を上げていた平石久平次にそれを報告。
「陸船車」の動力システムは不明だったため久平次は独自に設計し、
享保17年に「新製陸舟車」として完成したとされる。
 「新製陸舟車」は、木枠の舟形で前輪1個、後輪2個の三輪車型。
動力は、フライホイール状の円板に、クランクシャフト状の鉄棒を組み込み、
ペダル(げた)をこいで進む。文書には「一時に七里(時速約14キロ)走り候」とある。
 この史料は、約20年前に中日本自動車短期大学の教授だった大須賀和美さん(故人)が
「自動車前史」として発表したが注目されず、今回梶原さんが自転車としての視点から改めて分析した。
 梶原さんは「1730年代にペダル機構の自転車が日本に存在していたことで、自転車史が塗り替わる」と話している。
 梶原さんは、所属する産業考古学会理事長の川上顕治郎・多摩美術大学教授(生産デザイン)に依頼し
「新製陸舟車」の5分の1(全長30センチ)の模型を復元させた。

 川上教授は「『新製陸舟車』のペダル機構はまさに自転車そのもの。
安定性から三輪にしたのは当然と思われる。
しかし整地が少ない当時の道路事情もあって、普及しなかったのではないか」と話している。