宇宙開発が始まって40年で人工衛星など総計2万トン以上の人工物が軌道上
に打ち上げられた。現在でも4500トン,およそ1万個の人工物が地球を回って
いるが,稼働中の人工衛星はそのうちのたった5%にすぎない。残る95%は不要
になった衛星やロケットなどの残骸や破片などだ。これらは宇宙のゴミ,
「スペース・デブリ」と呼ばれる。
 史上最悪の宇宙ゴミ発生事故は1996年6月3日に起きた。1994年に打ち上げ
られ,軌道上を漂っていた米国のペガサスロケットの上段部分が突如爆発し
,高度250〜2500kmの広い範囲にわたって,地上から観測できる大きさのもの
だけで700個以上の宇宙ゴミをまき散らした。この爆発事故によって,ペガサ
スロケットのわずか25km下の軌道を周回しているハッブル宇宙望遠鏡への
宇宙ゴミ衝突の危険性は2倍に跳ね上がった。

 1996年7月には,ついに活動中の衛星と宇宙ゴミとの深刻な衝突事故が起
こってしまった。フランスの軍事衛星セリースは,10年前に軌道上で爆発し
たヨーロッパのロケットの破片と相対速度秒速15km(およそ時速5万4000km)
で衝突,姿勢制御用の装置に損傷を受けた。しかし,懸命の復旧作業によっ
てセリースはミッションを継続できるまでに回復した。

 残念なことに,現在稼働中のすべての人工衛星は,1〜10cmの大きさの宇宙
ゴミに対しては衝突から身を守る術をもっていない。この範囲のサイズの
宇宙ゴミは,現在の米ロの追跡システムには小さすぎてキャッチできず
事前回避が不可能だ。しかも現在の人工衛星に使われている部材では,
このサイズの宇宙ゴミが衝突すれば容易に衛星の壁面を貫通してしまうのだ。