培養皮膚2年後にも国産化  今夏から臨床試験
厚労省研究班

やけどや皮膚病の治療に使う培養皮膚のうち、
真皮の開発をめざす厚生労働省の研究班(主任研究者=黒柳能光・北里大教授)が今夏、本格的な臨床研究を始める。
全国16の医療施設が参加して患者に使う大規模な取り組み。
研究班はベンチャー企業とも協力し、
早ければ2年後に国産製品を完成させることを目標にしている。

全国16の施設参加 ベンチャーとも協力
皮膚の表面は厚さ約0.1ミリの表皮に覆われ、
その下に厚さ数ミリの真皮がある。
北里大が92年度から開発を進めてきた培養真皮を臨床研究に使う。
北里大はこの技術を使ってすでに150例の治療をしている。

昨年度は、大学内の人工皮膚研究開発センターに本格的な製造・保存設備を整えた。
ウイルスや細菌に感染していないかどうか厳重にチェックしたうえ、そこで製造した培養真皮を配布する。
参加する各施設の倫理委員会の承認を得るための準備も進めている。

培養真皮は次の要領で作る=図。@人から提供を受けた皮膚の中の線維芽細胞を取り出す。
A線維芽細胞をフラスコの培養液中で増やす。
B皮膚の再生を促す働きがあるコラーゲンのスポンジシートに、ヒアルロン酸のスポンジシートを重ねて2層構造にする。
C増えた線維芽細胞をコラーゲンのシートに染み込ませる。

培養真皮、表皮とも、米企業がすでに製品化しており、
世界の市場の多くを占めている。
ただ、病原体の感染の有無や、
価格が高いことなど医療現場で不安の声もある。
日本の再生医療ビジネスを育成する必要性もあり、
国産製品の開発が求められていた。
政府のミレニアムプロジェクトに掲げられた、
再生医療研究の柱の一つでもある。

黒柳教授は「性能が高く安全で安い国産技術の実現をめざしたい」と話す。

治療対象
やけど、糖尿病性の皮膚かいようなどで重症のものは、真皮まで大きな障害が及ぶ。
今回の研究はこうした患者を対象にする。
患部に培養真皮を移植すれば、治療期間の短縮や回復の向上につながる。

やけど患者の場合、真皮に達するほどの症状で治療を受ける患者は年間4万人いると推定される。
また、糖尿病の増加や高齢化に伴い、皮膚の損傷で培養真皮が必要となるケースが増えるのは確実。
培養表皮は軽症の時に使われることが多い。

人の細胞を材料にして臓器や組織を再生するビジネス市場は将来、世界で48兆円になるといわれる。
実用化が先行している培養皮膚市場は急速に拡大している。

朝日新聞2001年5月13日