月からきました【其の三十一】
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0309うさぎ1号
2010/02/19(金) 00:13:01ID:iILBesyKかろうじて光を浴びている家の壁は鈍いオレンジに浮かんでいるが、家の奥と路地の隙間は真っ黒で何も見えない。
まったく人気のないうらぶれた町を彷徨いつつ歩く。
誰もいない。無人の町のなんと心地よいことか。
4つ角で立ち止まり、大通りから伸びる細い道を覗きこむ。
狭い道の両端には掘立小屋のような民家が並んでいる。
すぐ脇の民家の窓からカタリと音がした以外は、なんの気配もない。
かすかに下水の匂いがする他、風すらも吹かない。
まったくの無音である。
道の突き当たりにある家の壁は今にも崩れそうだ。
狭い庭で伸び放題に伸びた木の枝がこんもりとした影で家を包み込んでいる。
4つ角の後ろ。反対の道を見渡すと、
町は唐突に無くなり、荒涼と冬枯れた畑にどこまでも狭い道が伸びていた。
道の端にはやや乱杭状態に時代錯誤な木の電柱が植えられている。
オレンジの暗い空と、細い道と、影絵のような電柱だけの世界。
電柱に取り付けられている裸電球はまだ灯らない。
その真っ黒にしか見えない電柱は果たして本当にそこにあるのか。
歩み寄って電柱に手を触れてみる。果たして確かに手触りはあるが、
電柱はただの影のように真っ黒にしか見えない。
電柱に触れている私も真っ黒になっている事だろう。
あぁ、テンションが上がってきた。夜が来る。夜が来る。
周囲に人がいないことを確かめると、がっぷりと電柱に組み付いた。
腕力と足にものを言わせて電柱を数歩分上る。
空中で電柱の周りをぐるりと一回転し、逆さまにぶら下がって地面に影を落としてみる。
紙切れでできた体のように影をゆらゆらとゆらしつつ風に体をたなびかせようとすると、
不意に
「躍らせねぇよ」と真下から声がした。
いつの間にか電柱の下に立っていた人影が、前触れもなくすっぱく突き上げるものを電柱の根元にぶちまけた。
名無しのゲロで踊りはお開きと相成りました。
・・とっぴんぱらり
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