「カジノで観光客が集まるなんて幻想」――観光カリスマが語る
デイリー新潮 
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/12061450/?all=1

 いわゆるIR法案(カジノを中心とする統合型リゾート施設の設備推進を目指す法案)が
今週、衆議院の本会議で可決した。別名「カジノ法案」とも呼ばれる同法が通ったことで、
今後は日本でも本格的なカジノの開設が目指されることになる。

 同法の背景には、カジノ施設の開設でインバウンド(訪日外国人)を取り込もうという一部
政界・財界の期待があるのは周知の通りである。しかし、カジノが本当に経済の起爆剤に
なりうるのだろうか。

 実際、観光の専門家の中には、「カジノは経済の起爆剤にならない」と懐疑的な声が根
強いのだ。地域振興の現場で奮闘する二人の専門家が「ぶっちゃけ」で語り合って話題を
呼んでいる『観光立国の正体』では、シンガポール在住経験も持つ藻谷浩介氏と、スイス
在住で各国の観光事情に詳しい観光カリスマの山田圭一郎氏が、次のように語っている
(以下、引用)

■発想が「リゾート法」と一緒

藻谷:国内と海外の認識の差ってことでついでに言うと、カジノはどう思う?
山田:正直、「何を今さら」という感がぬぐえないです。カジノを作ったところでうまくいってい
    るところなんてほとんどないですよ。カジノだけでなく、IR(Integrated Resort:統合型
    リゾート)そのものをちゃんと理解してない人が多いです。

藻谷:IRとしてうまくいっているのは、シンガポールのマリーナベイサンズと、ラスベガスや
    マカオの一部くらい。圧倒的多数はうまくいっていない。
山田:IRでうまくいっているところも、カジノだけで儲けているわけではないですからね。最近、
    マカオはエコツーリズムも推進しています。ポルトガル統治時代の歴史的建造物もか
    ろうじて残っているので生活文化を活かそうとしている。

藻谷:マリーナベイサンズも、日本人はあの奇天烈なビルの上にあるプールに入って喜んで
    いるだけ。カジノに行っている人はほとんどいない。ラスベガスでも日本人客のほとんど
    はショーや食事を楽しむのが主目的です。対して中国人は賭け事が大好きですが、
    七割が華人のシンガポールでは国民は高い入場料を払わねばカジノには入れない。
    ギャンブル中毒者の増加を防ぐためです。ですからマリーナベイサンズの場合、中国
    本土からのお客が頼りです。ここが賑わっていた理由のひとつに中国共産党の腐敗官
    僚たちのマネーロンダリング機能を担っていたこともあるらしい。それも習近平の反腐敗
    闘争で相当減ったとか。
山田:アメリカのカジノだって、ラスベガスの一部を除けばうまくいってない。アトランティックシティ
    なんて落日の観光リゾート地です。韓国にもカジノが各地にあるけどそれで韓国経済が
    潤っているという話は聞いたことがない。

藻谷:僕はカジノの話を聞くたびに、ディズニーランドを見てきた人が「ウチの町にも遊園地作る!」
    とダダをこねているようなものだと感じます。ラスベガスやマリーナベイサンズとカジノ一般は、
    ディズニーランドと普通の遊園地以上に違います。逆に言えば、「カジノで地域活性化」と唱
    える人は、これに限らず顧客目線でビジネスを考える能力がない。何をやっても客商売では
    失敗するタイプですね。
     そもそも、東京も京都も大阪も、カジノのコンセプトと元々の資源がマッチしない。ニューヨ
    ークやパリやローマだって、沖縄やハワイだって同じでしょう。
山田:推進派の話を聞いていると、昔のリゾート法の頃のような意識がまだ残っている。開発収入
    で利益を得たいとか、それで恩恵を被りたいみたいな話ばかり。どこかの国立競技場と同じ
    ですね。
藻谷:これもプロダクトアウト(注・顧客の望むものではなく自分が作ったものを売る)の発想の典型
    です。リゾート法の頃、「高層ホテルとゴルフ場を作れば客が来る」と思い込んで、ダメな設備
    を大量に作ったのと一緒。