出費かさみ心身も消耗 面接東京や大阪に集中 苦しむ地方の学生
http://edu.chunichi.co.jp/gakusei/?p=3795

就活で関西に何度も行くために女性が使ったJR西日本のICカードと手帳の路線図=愛知県内で

地方の大学に通う就活生が地理的なハンディに苦しんでいる。
企業の多くは大都市に集中し、面接などは東京や大阪で行われることが多いためだ。
名古屋の学生も例外ではない。お金、時間、体力、気力…。あらゆる面で消耗している。

今春、愛知県内の洋菓子製造販売会社に就職した女性(22)の志望はホテルだった。
全国展開の場合、説明会や面接の会場は大半が東京と大阪のみ。
名古屋の大学生だった女性は東奔西走し、実家がある北陸のホテルも受けた。
3年生の1月から1年間にわたり、新幹線とバスを使って東京6回、関西8回、北陸6回の計20往復。
16万円以上を費やした。帰りのバスが渋滞にはまったときは、名古屋で終電を逃してタクシー代が手痛い出費に。
バイトの稼ぎは底を突き、親に仕送りの増額を頼んだ。
体力的にもきつい上、面接を控えた不安は慣れない土地の会場探しで増幅された。
「名古屋で開いてくれたらいいのに」と何度も思った。
往復するたび「あと何回繰り返すのか」と追い詰められた。
「どうせ東京に行っても落とされる」。マイナス思考になりつつも名古屋で踏ん張り、年明けに今の会社から内定を得た。
ホテルへの未練はあるが、「将来は地域を代表する商品の開発に携われたら」と前を向き始めている。

遠隔地の往復に要する時間も就活生を不安にさせている。
信州大4年の男子学生(22)は大学がある長野県松本市と東京を21往復し、カプセルホテルに7回泊まった。
14万円以上の出費に加え、片道4時間かかるバスの乗車時間は計170時間近い。
会社の資料を読み込んだり、エントリーシート(ES)を書いたり「有効に使いたい」と思っても揺れる車内では難しい。
「東京の学生は移動時間が短くて済む」と、スタートラインに立つ以前の地理的なハンディを痛感した。
満員電車、混み合う飲食店、山は見えずビルが立ち並ぶ街…。
やがて東京自体が嫌になり、生まれ育った長野県に気持ちが傾いた。
ESを送った8割は東京の企業だったが、内々定を得た3社のうち東京の2社は辞退し、地元の地方銀行に決めた。

遠征は待機場所も悩みの種だ。
航空業界が志望の南山大4年の女子学生(21)はこれまで東京5回、大阪は2回往復した。
夜、名古屋を出た高速バスが東京に着くのは早朝。近くのファストフード店が開くまで30分以上待たねばならない。
入店後、面接が始まるまで10時間居続けたことも。
6時間かけ東京へ行き、集団面接で自己PRを30秒間行い、そのわずか5分後に不合格となったときは茫然(ぼうぜん)となった。
群馬県の高速ツアーバス事故を受け、「バスは避けたいが、資金的に乗らざるを得ない」と嘆く。
交通費の捻出のため食事の量を減らし、体調を崩した友人もいるという。

地理的に不利な状況を根本的に変えるのは難しい。ただ、遠征する就活生を支援する動きはある。
大学が交通費を補助するのもその1つ。
手厚いのは名古屋外国語大だ。
面接などで遠隔地に赴く場合、1人あたり10回まで往復交通費を支給。
名古屋から片道100キロ以上が対象だ。
高速バスの運賃が基準で東京8000円、大阪4500円。
北海道と沖縄は上限の2万円とした。

都市部で開かれる合同企業説明会の会場と大学を往復するバスを仕立てる大学も増えてきた。
中部9県の国立大では信州、滋賀、福井、富山の4校。
富山大は今期、横浜、大阪、名古屋を1往復ずつさせ、計180人が利用した。
担当者は「地方の大学なので、都会で厳しい就活の実情を知ってもらう狙いもある」と話す。
待機場所を提供するバス会社も。
平成エンタープライズ(埼玉県)は、東京や大阪など主要駅近くに設けたラウンジを乗客の就活生が使う場合は優遇している。
例えば、日帰りでは滞在中に無料で何度も利用できる。
更衣室、化粧室、仮眠室、自習室が整い、ネットやズボンプレッサーも使える。手荷物の預かりサービスもある。