>>851
「和声的意識と対位法的意識の二重性こそ、バッハが模範的に解決した作曲問題のあらゆる意識を書き換えるものであって、
 中世の完成者という像を排除するものである。もし彼が人々の張ったレッテル通り中世の完成者だったとしたら、
 彼はこうした二重性を自分の内に感じることもなく、とくに晩年の思弁的作品に見られるように、
 古いポリフォニー的意識には想像もつかないパラドックスに苦しむこともなかっただろう。
 すなわちそれは、音楽はどうしたらあらゆる進行において和声的・通奏低音的に有意味であることを証明すると同時に、
 独立した声部の同時性によって多声的に自己を完全に組織することができるかという問題である。」

                                      アドルノ「バッハをその愛好者たちから守る」より