ハイティンクのブルックナーの中で、1曲だけ録音の採り方がきわめ
て鮮明なレコードがある。それは「第8」だが、アダージョあたりは、
まじめな、奇をてらわない表現と相俟って、なかなか愉しめるものに
なっている。
第1楽章はフォルテの響きの冗舌さと、弱音部の軟弱さによってハイ
ティンクの悪い面が出ているが、フィナーレは「第4」のスケルツォ
と共に、彼が珍しく個性を出した部分だ。リズムが走りすぎてずっこ
けるような速いテンポ、そして常々はティンパニが弱すぎて生ぬるい
思いをさせるハイティンクが、ここで気狂いのように強打させ、いっ
たいどうなっているのか、あっけにとられてしまう。コーダのアッチ
ェレランドも騒がしくて珍妙の極みであり、このフィナーレを聴けば、
ハイティンクが日常のどのような内面生活を送っているか、その才能
がどの程度のものか、一目でわかるであろう。