>>137 第五章 天下の争乱
326頁。「殿、ご参内はいかがでございましたか」
石川 数正、鳥居 元忠、松平 康忠らがそろって話を聞きたがった。
「まあまあ、じゃな」
家康は言葉をにごした。
ずっと平伏して庭の玉砂利を見ていたとは言いにくかった。
「帝とは、どういうお方でございますか」
「御簾の奥におられるので、拝見することはできぬ。対面の間、お言葉を
発せられることもなかった」
「御前に伺候するだけで、神気をあびて身も心も清められると聞いたことが
ありますが」
「直に拝見したなら、目がつぶれるとも聞きましたぞ。それゆえ大和絵にも、
お姿を描かぬ仕来りだそうじゃ」
数正も元忠も、そういう話しは子供の頃から山ほど聞き込んでいる。
何しろ公卿が入った風呂の湯が、万病に効くと信じられていた時代なのである。
以下、省略。読みどころ満載。是非、御一読願いたい。