演奏技術の進化について

--[立花] フォリオスはそんなに難しいんですか。
「当時のギター雑誌で、『こんな演奏ができっこない曲を書いたのは、作曲家がギターを全く知らないからだ』と批判されましたよ。
だけどぼくは自分でもギターを持っていて、実際にギターにさわりながら書いたんです。
ここはむずかしいけど、訓練すれば絶対にできるはずだということを自分の手で確かめてあります。
実際荘村くんはヒーヒーいいながらも、ちゃんと弾きこなした。
そして面白いことには演奏技術というものは進化するもので、その後何年かして山下和仁という若いギタリストがぼくを訪ねてきて、
今度外国で『フォリオス』をやることになったからぜひ聞いてくださいといってばくの前で弾いてみせたんですが、
そしたら荘村が最初にやったときは、ここは特に難しいといっていた箇所をいとも簡単に弾いちゃった。
演奏上の難しさというのは、最初に誰かが突破してしまうと、やがて、たいていの演奏家が突破できるようになるものなんですね。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲なんていい例ですよ。発表当時は、演奏不可能なんていわれていたのに、
いまでは十幾つの女の子がピャーッと弾いちゃうわけでしょう。
フィジカルな理論的可能性の道が開かれると、あとは訓練でいけるんですよ。」

pp.689-690