" 伯父夫婦は私の音楽の才能に気がついた。六歳になるかならぬ頃、ドン・フランシスコ・リヴェラという教師につかせてくれた。
彼はヴァイオリニストできびしい耳とごつい指を持つ男だった。私の音楽のレッスンを苦行に変えてしまった。
[中略]
私はなにひとつレッスンの内容をおぼえなかったし、また彼は私のことを記憶力もリズムも音感も駄目なやつだときめつけた。
伯父はそれに納得しなかったが賢明にもそのひどいレッスンをやめさせてくれた。
 ある渡りもののフラメンコ・ギタリストがその町に足をとどめていた。
[中略]
私が彼の指の動きをみつめているのを見て、もしかしたら追い出されずに飯のたねにありつけるかもしれないと考えたのにちがいない。
 「わしに教えてくれというのかね?」とたずねた。私は何度もうなずいた。
そして、一か月半のあいだに、そのあわれな男の知っているものすべてを習得してしまった。"

『セゴビア自伝 わが青春の日々』、真鍋理一郎訳、全音楽譜出版社、1978、pp.3-4